「もう余命も僅かか……」
歴史上もっとも偉大と評された英雄である賢者【ルーク・アーデンバーグ】、彼は不治の病に侵され、余命幾許も無いという状況にあって、自らの人生を悔いていた。
曰くこれまでの彼の人生は彼自身の物では無かったのではないかと。
その彼は残された僅かな時間を使って描いた魔法陣の上に立ち、こう呟く。
「転生魔法」
そうして彼は徐々に薄れていく意識の中、次に目覚めてから始まる新たな人生に思いを馳せながら、稀代の英雄ルーク・アーデンバーグとしての人生の幕を自ら降ろした。
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英雄と呼ばれた男が人々から惜しまれながらもこの世を去ってから300年。
無事転生魔法を成功させた彼は、農家の子供として生まれ、決して裕福とは言えないものの優しい両親の元、二度目の子供時代を存分に楽しんでいた。
そして五歳になったある日の事、彼は今世での魔法の力を確認する為、村を抜け出し近くの森へと訪れ、試しに簡単な風魔法をそこそこ強い魔物に放ってみたところ…
魔物は真っ二つになった
「えっ?……これは…今後攻撃魔法を使うのは禁止だな」
これは前世で人のために尽くし、英雄とまで呼ばれた男が今世では自由気ままに人生を謳歌していくという物語…に、なるのかな?