獣の見た夢

ストーリー概要

※　本編冒頭部分を一部抜粋

　一人の男が死にかけている。

　トイレで血を吐いていた。

　体が崩れ落ちた。

　冷や汗が出て、動悸が激しい。

　意識が暗くなっていく。

「やっと終わりか……」

　男はそう呟く。

　つまらない日々だった。

　どうしようもなく堕ちきった人生。

　とりあえず働いただけの毎日。

　なんの充実感もない。

　家族もいない。

　そして、両親の愛情すらもなかった。

　孤独。

　だいぶ長い間を生きてきて、誰とも愛情を交わすことはできなかった。

　一人の恋人もいなかった。

　誰も愛せなかったし、誰からも愛されなかった。

　友人もいなかった。

　からっからに渇いた人生。

－やっと終わる。

　これで何も感じなくて済む。

　おれはやり直しなんかしたくない。

　このまま消えたい。

　男は一抹の寂しさと、大きな安堵感を得ていた…………。

この作品の特徴

小説家になろうサイト上の評価ポイントは2万ほどでありながらレビュー数が20件を超えている作品。
※現在はカクヨムにて連載中
本格派異世界ファンタジー作品。この作品は心理描写や情景描写が非常にしっかりと描かれており、もはやラノベとは呼べない。(レビューではこの部分を絶賛する声が多い)
最悪に近い環境の家庭に生まれ、その後も決して幸福とは言えない人生を歩んできた男が主人公。そんな彼が温かく優しい家庭の子供として転生して愛情を注がれながら育つも、前世の辛い記憶を持つが故に、その愛情を信じきれずに葛藤する、その繊細な心理が見事に描かれている。